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たゆた日記


こっそり 更新中
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って意味合いからは矛盾するけど
『新美南吉 童話選集 5 』より『一枚のはがき』
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    『一枚のはがき』
    見開き5頁(ページ)足らずの小作品ながら
    新美南吉童話選集の最後を飾るにふさわしい

    今回、南吉の作品をずらりと読んでみて思い知ったこと

    善人と悪人、田舎者と都会の子、金持ちと貧乏などを対比させ淡々と語ることで
    世の中の理不尽さや、それが蔓延(はびこ)ってるのが“現実”なのだと伝え続けたのが新美南吉なのだと

    その表現の場を“童話”に定めたのも
    “力なき小さい人たち”に、この理不尽極まりない世の中に対峙する力をつけて欲しくてなのだろう

    自身が幼い頃に大人の都合に翻弄された体験、大人の狡(ずる)さや欲にまみれた醜(みにく)さ、田舎から都会へ出たときに受けた感情、敗北感や焦り

    十四、五で文学に目覚めた南吉は、本来持つ洞察力に加えきっと自身を取り巻く世界を“作家の目”で見つめていたのだろう

    そして、二十一の若さで不治の病に侵される
    けれど幼い頃に生母を亡くした南吉にとって“死”は“生”の傍(かたわ)らに常にあるものだったのではないだろうか

    だからこそ“突然とも思える死”を
    こんなにも淡々と描くことが出来るのだと思う

    この『一枚のはがき』はその極み

    〈おてての白いかわいい〉子が、人形や時計や電気スタンドなどの置かれた〈うつくしいつくえ〉で書いた一枚のはがき

    東京に暮らす女の子は、そのはがきが遠い北海道まで本当に届くのか心配をします
    けれどお母さんは言うのです
    〈ロンドンへだって、パリへだってだせばゆくんですもの。〉〈北海道くらいなんでもないわ、〉と

    そのたった一枚のはがきを届けるため〈おてての白いかわいい〉子とそう変わらない小さな手を持つ少年が、病気になった配達夫のお父さんのかわりにまだ深い雪の残る山の中へと入っていくのです

    〈うつくしいつくえ〉で手紙を書き〈やわらかいベッドのなか〉でお母さんのお話を聞きながら眠るのがその女の子の日常なら
    〈こおった風は眼にあたるとなみだをださせ、手にあたると指を赤くふとらせ、耳にあたるとそれをちぎってゆくようにいたませる〉厳しい山の雪道をたった一枚のはがきのため配達へ行くのも この少年の日常

    〈山の上に黒いふろしきのように夜がかむさってき〉て、〈夜といっしょに、かすりのような雪が空いっぱいにふってき〉たのを見たのが少年の最後の景色だったのか
    ……

    何度も読み返してわかってるつもりだったけど、書き起こしてみると
    こんなにも苦しい

    |06:59| おすすめの本 | comments(0) | trackbacks(0) | posted by たゆた - -
    『新美南吉 童話選集 5 』より『花のき村と盗人たち』
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      『花のき村と盗人たち』
      昨日まで錠前屋や大工だった盗人の弟子と
      その親方が交わす会話がまるで落語のよう

      人はもちろん猿からでさえ嫌われて〈長いあいだ、わるいきたない心でずっといた〉盗人の親方が
      この美しい花のき村で初めて人に信用され、うれし涙をながし、子どものとき以来の〈うつくしい心〉となります

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      みんなが自分をきらっていたのです。みんなが自分を信用してはくれなかったのです。〈中略〉ひとに信用されるというのは、なんといううれしいことでありましょう。……
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      これはちょうど、あかまみれのきたない着物を、きゅうに晴着にきせかえられたように、きみょうなぐあいでありました。
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      長年盗人として嫌われながらも生きてきた親方の、生まれ変わるきっかけとなったシーンがこちら
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      「この牛、持っていてね。」
      かしらがなにもいわないさきに、子どもはそういって、ついとそばにきて、赤い手綱をかしらの手にあずけました。
      ーーーーーーーーーーーーーーー

      ともすれば、何かと劇的に表現しがちなこのようなエピソードを
      草の上にでもそっと置くように書くのが南吉の南吉たる所以

      芥川と太宰の違いみたいだ

      ーーーーーーーーーーーーーーー
      四人はうつむきがちに、歩いていきました。かれらはかしらのことを考えていました。よいかしらであったと思っておりました。よいかしらだから、さいごにかしらが「盗人にはもうけっしてなるな。」といったことばを、まもらなければならないと思っておりました。
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      盗人としてずっと人に嫌われ続けていた親方にも救いがあるし、四人の弟子達にも明るい兆しを感じるシーン

      何かとひねくれ要素の入る南吉童話には珍しく
      “人とは信じても良いものなのですよ”と最後までずっと言い続けるお話なのでした
      |06:55| おすすめの本 | comments(0) | trackbacks(0) | posted by たゆた - -
      『新美南吉 童話選集 4 』より『和太郎さんと牛』
      0
        なかなかの問題作なんではないかと思う『和太郎さんと牛』

        さて、内容は…

        和太郎さんはたいへんよい牛を持っていると皆に評判

        それはよぼよぼで、空車を引いてさえぜいぜいいうくらい年取った牛であるけれど
        酔っていつも寝込んでしまう和太郎さんを
        毎回きちんと台車に乗せて家まで連れて帰ってくれるから

        というほのぼのとした話だけかと思いきや
        年老いた母の事を親身に思えない嫁を
        穏やかに、けれどぴしゃりと離縁する場面あり
        酒に酔って行方不明になってしまう和太郎さんの大捜索や
        嫁は要らぬが子どもは欲しい和太郎さんが天からとも思える子どもを授かる場面ありと
        なかなかてんこ盛りな内容

        そんな中にも南吉独特の美しい描写がいくつもあり少し抜粋を
        ーーーーーーーーーーーーーーー
        百姓ばかりの村には、ほんとうに平和な、金色(こんじき)の夕ぐれをめぐまれることがありますが、それは、そんな春の夕ぐれでありました。でそろって、山羊小屋のまどをかくしている大麦の穂の上に、やわらかに夕日の光がながれておりました。
        ーーーーーーーーーーーーーーー
        そのうちに、年とってすすびた柱時計は、しばらくぜいぜいと、ぜんそく持ちのおじいさんのようにのどを鳴らしていてから、長いあいだかかって、十一時を打ったのでありました。
        ーーーーーーーーーーーーーーー

        美しい

        けれど、改めて内容を書き起こしてみると
        嫁は要らねが後継は欲しい
        とか
        前触れもなく嫁をすっぱりと離縁してしまう辺りとか

        ちょっとサイコじゃね?
        と私なんかは思ってしまう

        この時代あるあるなんかなぁ
        |06:05| おすすめの本 | comments(0) | trackbacks(0) | posted by たゆた - -
        『新美南吉 童話選集 4 』より『おじいさんのランプ』
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          『おじいさんのランプ』
          最近、子どもの国語テストの問題になっているのを見た

          南吉の作品は、戦前に書かれた物とは思えないほど
          今でもみずみずしく美しく
          けれど華美ではなく感傷的過ぎず
          かつキレイな日本語で綴(つづ)られているので
          確かにテスト問題にしやすいんだろな

          この『おじいさんのランプ』は
          南吉の生前に唯一出版された童話集のタイトルにもなった作品で
          電気が村々へ普及する頃のランプ売りのお話

          自分の生活だけではなく自尊心や生き方さえも肯定してくれていたランプを
          もうランプの時代ではないと、月夜の池のほとりの樹々にすべてあかりを灯(とも)して吊るし
          自分の商売を終わりにするシーンは圧巻

          月明かりだけがしんしんと降る中
          ランプの薄氷のようなガラスが割れる音が耳にも胸にも突き刺さる

          何かをあきらめ
          幕引きをした事のある人には余計に響くかも

          私もかつてのお商売を辞めた時の気持ちがよみがえってしまった

          南吉は、情景や〈想い〉さえも
          映像のように表現するのが本当に巧みです

          最後におじいさんは孫に
          ーーーーーーーーーーーーーーー
          「自分の古いしょうばいがお役にたたなくなったら、すっぱりそいつをすてるのだ。いつまでもきたなく古いしょうばいにかじりついていたり、自分のしょうばいがはやっていたむかしのほうがよかったといったり、世の中のすすんだことをうらんだり、そんな意気地のねえことはけっしてしないということだ。」
          ーーーーーーーーーーーーーーーー
          と〈意気のあらわれた顔〉で言うのであった

          ほんと
          過去の栄光にしがみついてダラダラ生き続けている会社の亡者に聞かせえてやりてえぜ、、まったく。
          |06:25| おすすめの本 | comments(0) | trackbacks(0) | posted by たゆた - -
          『新美南吉 童話選集 3 』より『ごんぎつね』
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            『ごんぎつね』
            新美南吉の代表作
            教科書にももう長いこと掲載され続けている名作

            わりとカラッとした文体に油断してると
            最後にやられてしまうぞ、要注意
            ーーーーーーーーーーーーーーー
            兵十は、火なわ銃をばたりと、とりおとしました。青いけむりが、まだつつ口からほそくでていました。
            ーーーーーーーーーーーーーーー
            この、ぐったりと目を瞑(つむ)るごんの脇に立ち昇る〈青いけむり〉の描写、
            これだけでもう一遍の映画を観たよう

            これもなんと、
            南吉18歳のときの作品


            改めてこんなにたくさんの南吉作品を読んでみて、子どもの私がどうしてこの作家に惹かれたかがわかった


            人は基本残酷な生き物だと思っているので
            昔も今も、夢ゆめした話が苦手。
            子どもの頃は特に「通りゃんせ」などの短調な調べが心地よく、甘美にさえ感じていた。
            金子光晴や三好達治、山頭火でも特に
            寂しい作品に惹かれる。

            〈哀しさ〉こそ本物だと思っているのかもなあ

            冷たく澄んだその〈哀しさ〉を
            白い毛のぽかぽか生えたきつねの小さい手がすくい取って差し出してくるような
            そんな南吉の作品が好きでしょうがない

            |06:25| おすすめの本 | comments(0) | trackbacks(0) | posted by たゆた - -
            『新美南吉 童話選集 2 』より『正坊とクロ』『小さい太郎の悲しみ』『牛をつないだ椿の木』
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              『正坊とクロ』
              「赤い鳥」に初めて掲載された
              南吉が18歳のときの作品

              小さなサーカス団の落ちぶれていく姿を描いているお話
              ーーーーーーーーーーーーーーーー
              正坊の病室のまどぎわには、あおぎりが葉っぱをひろげて、へやのなかへ青いかげをなげいれていました。
              ーーーーーーーーーーーーーーーー
              団長さんはさびしそうにわらって、
              「なんにもなくってうちをでたんだから、なんにもなくってうちへ帰るんだよ。」と言いました。
              ーーーーーーーーーーーーーーー

              サーカス特有の、カラフルさやきらびやかさの真ん中にいつも存在する〈哀しさ〉が通奏低音のようにうっすらと流れていて、正坊の無邪気さが余計にそれをそっと際立たせている

              〈哀しい愛〉をそうっと描けるのが新美南吉の真骨頂ではないかと思う

              そういえば、芥川の『蜜柑』もそんな感じだなぁ


              『小さい太郎の悲しみ』
              南吉の寂しい幼少体験から生まれた作品

              かぶと虫を捕まえたよろこびさえ
              探してもさがしても誰とも分かち合えない、そんな悲しみを描いたお話

              ーーーーーーーーーーーーーーー
              虫が枝からおちるように、力なく小さい太郎は格子からはなれました。
              ーーーーーーーーーーーーーーー
              しかしおとなの世界にはいったひとがもう子どもの世界に帰ってくることなないのです。
              ーーーーーーーーーーーーーーー
              ある悲しみは泣くことができます。泣いてけすことができます。
              しかしある悲しみは泣くことができません。泣いたって、どうしたってけすことはできないのです。いま、小さい太郎のむねにひろがった悲しみは泣くことのできない悲しみでした。
              ーーーーーーーーーーーーーーー


              『牛をつないだ椿の木』

              南吉が亡くなる前年の作品
              ーーーーーーーーーーーーーーー
              つめたい水のにおいをかぎながら、鹿のように水をのみました。はらのなかが、ごぼごぼいうほどのみました。
              山のなかでは、もう春ぜみが鳴いていました。
              ーーーーーーーーーーーーーーー
              |06:35| おすすめの本 | comments(0) | trackbacks(0) | posted by たゆた - -
              『新美南吉 童話選集 2 』より『手ぶくろを買いに』
              0


                『手ぶくろを買いに』

                『ごんぎつね』に次いでよく知られているお話では

                お母さんきつねとこぎつねの会話が
                美しく優しく印象に残ります

                ーーーーーーーーーーーーーーーー
                「お母ちゃん、おててがつめたい、おててがちんちんする。」といって、ぬれてぼたん色になった両手を母さんぎつねのまえにさしだしました。母さんぎつねは、その手に、はーっと息をふっかけて、ぬくとい母さんの手でやんわりつつんでやりながら…
                ーーーーーーーーーーーーーーーー
                「母ちゃん、お星さまは、あんなひくいとことにもおちてるのねえ。」
                ーーーーーーーーーーーーーーーー
                「このおててにちょうどいい手ぶくろください。」
                ーーーーーーーーーーーーーーーー
                月がでたので、きつねの毛なみが銀色にひかり、その足あとには、コバルトのかげがたまりました。
                ーーーーーーーーーーーーーーーー
                「ほんとうに人間はいいものかしら。
                ほんとうにに人間はいいものかしら。」
                ーーーーーーーーーーーーーーーー

                ただ、初めて読んだ時から再読する度にずっとモヤモヤしていた事が
                この本の解説にも書かれていた

                “なぜそんなおそろしい人間の元へ
                愛してやまない子ぎつねひとりでやったのか”

                解説には
                “はたして信じあえる相手かどうかをためそうとした”とある。


                そこで、南吉の生涯と重ねて考える。
                幼い頃、生母を亡くした南吉。新しい継母との関係も良好だったのに、後継にと生母の家の養子にさせられたが、祖母だけとの生活が寂しくつらく元の家に戻っている。

                継母が母ぎつね、ぼうし屋が祖母

                と当てはめてみると
                南吉の情愛とひねくれの混在したお話の数々にも、ふむふむ合点がいくような。
                |06:25| おすすめの本 | comments(0) | trackbacks(0) | posted by たゆた - -
                『新美南吉 童話選集 2 』より『空気ポンプ』
                0
                  『空気ポンプ』

                  正九郎は、大人に隠れて犯した罪の重さに苛(さいな)まれ、怯えていた。
                  ーーーーーーーーーーーーーーー
                  水からあがったばかりのこねこのようにしょんぼりつっ立って、ものがなしげに夕ぐれを見た。もうかれらにはいくところがない。すべてはおわってしまった!
                  ーーーーーーーーーーーーーーー

                  そして、それが晴れたときの描写の妙

                  ーーーーーーーーーーーーーーー
                  かた手にうみたてのほろぬくいたまごを持って通りにでると、正九郎は身も心もかるくなっていくのを感じた。長いあいだいたんだむし歯がポロリとぬけたような気持ちだ。ほんとうに長いくるしみだった。ところで心がかりがないということはなんという心持ちのよいことだろう。世界はうつくしく見える。空気はよいにおいがする。ほんとうに!
                  ーーーーーーーーーーーーーーーー

                  |06:25| おすすめの本 | comments(0) | trackbacks(0) | posted by たゆた - -
                  『新美南吉 童話選集 1 』より『げたにばける』『かげ』『ひよりげた』
                  0


                    届いたとどいた
                    『新美南吉 童話選集1〜5』

                    新美南吉は29の若さで亡くなっているのに
                    思ったよりたくさんの作品があることに驚いた

                    お気に入りをいくつか…

                    『げたにばける』
                    化ける事を習いたての子だぬきは
                    なぜだか下駄にだけは上手く化ける

                    その下駄を通りがかりのお侍さんが
                    履いていってしまうお話

                    心配でしかたない母ちゃんだぬきと
                    重くて泣き出してしまう子だぬき
                    さてさてどうなるか…

                    『かげ』
                    月のあかるいある晩に
                    自分の影と競争を始めるからすの話

                    ーーーーーーーーーーーーーーーーー
                    月がま上にのぼったので、
                    木のかげは黒くなり、
                    やねはかがみのように白くなりました。
                    ーーーーーーーーーーーーーーーーー

                    もう、この一文だけで
                    南吉がどれだけ優れているかわかります
                    圧巻の描写力

                    そうして
                    からすの疾走感と、すとんと終わる結末に
                    しばらく動けなくなってしまった

                    『こぞうさんのお経』
                    かわいらしく思わずにっこりとなるお話
                    南吉は、最後の一文でお話をくるっとまとめるのが本当に巧みです

                    『ひよりげた』
                    これも化け方を教えるたぬきの母子のお話

                    お母さんたぬきと子だぬきの会話が秀逸

                    美しいな
                    愛おしいなぁ

                    |06:00| おすすめの本 | comments(0) | trackbacks(0) | posted by たゆた - -
                    新美南吉
                    0


                      『ごんぎつね』『手ぶくろを買いに』などで知られる作家・新美南吉(にいみ なんきち)

                      著作権が切れているとのことで
                      ネットでもその物語を読むことが可能

                      初めて『大力の黒牛と貨物列車の話(百牛物語)』を読む
                      ↑クリックすると読めます。

                      なかなかのひねくれ方にワクワク

                      とはいえ、
                      物語は紙で読むのが落ち着く、ので

                      図書館でいそいそと
                      〈新美南吉童話集1~5〉を予約

                      さて、どんな
                      きれいな文体と
                      若干のひねくれに出会えるのか
                      わくわく
                      |06:30| おすすめの本 | comments(0) | trackbacks(0) | posted by たゆた - -
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